前回の休日は大雨でどこにも出かけられなかったけど、この日は朝から快晴でさっそくドライブがてらふらりとどこかへ遠出する。目的もなければ目的地も存在しない、気ままなドライブだ。つくりたてのプレイリストを聴きながら、気持ちよく晴れた青空とまぶしく太陽の光を反射する海を真横にスイスイと車を走らせる。しかしずっと海沿いを走っていたせいか、なんとなく山が恋しくなり近くにある(といってもその地点から30分くらいかかった)高原をめざすことにした。2時間ばかり車を走らせようやく目的地がみつかった。高原の駐車場に到着するとまだ早い時間帯なのか、観光客らしき車は一台も見あたらない。事務所の管理人の軽トラがぽつんと虚しくとまっているだけだ。しかし景色はどこまでも雄大でずっと見渡していても飽きることはない。くっきりとした青空にもくもくと積みあがる高い雲。まさに夏の雲だった。車内の外気温計は28℃を示している。これだけ標高が高いのに(しかもまだ朝)もうこの暑さなんだから、日中の街中なら余裕で30℃を超えそうだ。いや、そうこうしているうちにここも油断ならないから今のうちに散歩でもすましておこうと荷物をまとめていそいそと車を降りた。ちょうど駐車場の横に遊歩道があってそこからスタートする。散歩というよりもはやちょっとした登山気分だ。道はおおむねきれいに舗装されているが、ところどころ踏み分け道が伸びていてそちらはやや歩きづらい。どの道を選ぶべきか、たくさんの選択肢があり迷ってしまう。クマ出没注意と書かれた看板があちこちに立っていていささか心配だ。さいわいクマと出くわすことはなかったけど、もしばったり会ってしまったらどうすればいいんだろう。僕は熊よけスプレーでも用意しておけばよかったなと少し後悔した。そのようにして丘陵地帯をのんびり3時間ほど散策した。ほんとは1時間のつもりだったが、調子にのってどんどん先へ進んだら引きかえしの時間を忘れてしまっていた。まあたまにはこうして未開(といっては大げさだけど)の地をめぐるのも悪くない。しかし標高が高かったせいか、自宅にもどると顔が真っ赤に日焼けしていて驚いた。僕は帽子すらかぶっていなかったのだ。持参してはいたのだけど……。そして腕も真っ赤だし、なにより髪の分け目あたりも日焼けしているもよう。というのも髪を洗うとき、もうここを軽く押すだけで痛かったのだ。さすがにここまで日焼けしたのはいつぶりだろう。僕はふと学生のころに海で一日中遊びまくった日のことを思い出した。お湯をはった浴槽につかると腕がひりひりと痛んだ。翌日もその赤みは僕の顔と腕から離れようとはしなかった。3日目にしてようやく顔の日焼けした皮が剥がれはじめた。とくにおでこと鼻まわりがひどい。しかし腕の皮は剥がれることなくそのまま日焼けとして定着した。おそらく腕はすでに日焼け済みだったのだろう(顔はいつも帽子をかぶっているので)。毎日の散歩で幾層にも積み重なった、まるで夏の積乱雲のような日焼けの皮膚は、そんじょそこらの日差しでは大きなダメージを与えることはできなかったらしい。それにしても夏の標高の高い場所での太陽の強さはとんでもないことをあらためて実感させられた。つぎは車を降りた瞬間から帽子(キャップじゃなくてハットだな)をかぶらなきゃな。