早朝にいつもどおり散歩を開始すると地面に霜がおりていた。もう3月だし天気予報ではそろそろ暖かくなるときいていたのでまさかこれほど冷えているとは思わなかった。そういえば吐く息も白く、あちこちに形成されている水たまりもシャキーンと凍っていた。足で踏んでみるとバリバリと激しい音があたりにひびいた。でもちょっと快感なのでいろんな水たまりの氷を割りながら歩をすすめる。そのうち氷を割るのにも飽きて水たまりをスルーしながらせっせと足を前にはこぶ。とちゅうでぶち猫が茂みに身をひそめているのを発見し、おどかさないように静かに(気づいてないふりをして)前を素どおりした。猫はじっとこちらを睨みながら(いや、べつに睨んではないか)音をたてずに僕がとおりすぎてゆくのを見とどけていた。それにしても太陽がでてる朝ですらこんなに寒いのに、はたして猫は夜中どうやってこの寒さをしのいでいるのだろう。からだを丸めて静かに、無駄な体力を使わないようにじっと時が過ぎるのをただひたすら待っているのだろうか。それとも案外寒さを感じずにすやすやと眠っているのだろうか。いずれにせよあらためて野生動物のたくましさを実感せずにはいられない。あれだけあった雪の山もいまではすっかり消えてしまい、芝生があたり一面を占めていた。でも長いあいだ重い雪を背負っていたおかげで芝生はどこもぺったんこになっていた。まあこれはこれで草を刈る手間がはぶけるし、地面もがっしりしていて歩きやすい。でもやはりどこか元気がなさそうに見えるので早く立ち直ってほしいなと思う。霜におおわれた芝生には朝日が真横から差しこみ感動的な情景を放っていた。このまま芝生とともに朝日を浴びながら一日なにをするともなくぼんやり過ごせたら幸せだろうなと思った。けれども僕は(あたりまえだが)思い直して散歩を終了させ、そのまま仕事へむかうのだった。