エアコンの効いた快適な空間でのんびりゲームをしていたら、ふと「エアコンも掃除が必要なんだよな」という認識が脳裏をちらつき、なぜかそれが気になっていったんゲームを中断する。おもえば最後に掃除をした記憶があいまいだ。おそらく1年くらい前だったはず。いや、もしかすると2年くらい放置しているかもしれない。いずれにせよ、そのような長期にわたる奔放のせいですっかり掃除の仕方を忘れてしまった。そんなわけで椅子に上がりエアコンの下部に記載されている型番をメモってスマホで検索する。ネットで取扱説明書をダウンロードして(紙の取説をどこにしまったか覚えてない)お手入れのページを読み込んでいく。イラスト入りのていねいな解説だが、わりと感覚的な内容なので(例えばカクッと手応えがあるまで持ち上げるだとか、ツマミを持ち手前に引きながら開けるだとか)正直半分くらいしか頭に入らなかった。こういうのはやってみないとわからないなと判断し、とりあえずエアコンの前面パネルから外してみる。そういえば取説に書かれていたお手入れランプもしっかり点灯していたので、やはり掃除が必要だったみたい。前面パネルを外すとあちこちにほこりが付着していたので軽く掃除機できれいにする。それから(おそらくここが最重要)ダストボックスを取り出していく。左右に2つ装填されており、まずは右側から引っぱりだす。ダストボックスのカバーを外すとワタのようにたんまりたまったほこりが姿をあらわした。ボックスの形状どおりに美しく(汚いけど)おさまっていて、一瞬「このスポンジのようなものは部品の一部だろうか?」と思ったほどだ。年季の入ったほこりをゴミ箱に捨て、すっかり空間を確保したダストボックスをふたたび元の位置に装填する。左側も同じような工程できれいにし、お次はフィルターに取りかかる。するするとフィルターを引き抜きながらどれほど汚れがたまっているか恐るおそる目をやると、意外にもダストボックスほどほこりは付着していなかった。それでも微細なほこりがまんべんなく網の目に絡めとられている(ように見える)ので念のため掃除機をあてていく。しかし見た目はそれほど劇的な変化をもたらしてはくれなかった。ぼやけた灰色のフィルターは、掃除後もぼやけた灰色のまま静かに床に佇んでいた。ダストボックスほどの手応えを感じられなかったのは残念だけど、やれるだけのことはやったし精神的には安堵した。ふたたびフィルターをするすると元の居場所にもどしてやり、やはり前面パネルもあるべき場所へともどしてやる。コンセントを差し込んで、新鮮な空気を浴びるべく(掃除中は暑いのなんのって。春か秋にやるべきだったと今回の件で学んだ)リモコンの冷房ボタンをいそいそと押す。エアコンは問題なく稼働して部屋はみるみるうちに涼しい空気で満たされていった。それに同調するように、僕の心もさわやかな気分になった。しかしエアコンを眺めているとお手入れランプがまだ点灯したままであることに気づく。そういえばこれ、どうやって消すんだろう? まさかエアコン自身が「うんうん、きれいになったな」と判定して勝手に消すなんてありえないし(技術的には可能そうだが)やはりどこかに、それこそリモコンや設定項目なんかにリセットボタンがあるはずだと踏んで探してみたものの見つからない。仕方なくまた取説を開いてお手入れランプの消し方を調べてみると、どうやらエアコン本体にリセットボタンがあるらしい。せっかく調子づいて運転しているなか申し訳ないが、もう一度停止させて前面パネルを開いてみるとすぐにリセットボタンが見つかった。まったくどうしてこんな場所にあるのか謎だが(もちろんそれは誤って押さないためだとは思うが)とにかくこれでようやく任務完了だ。僕はリセットボタンをしっかりと押しこみ、それから前面パネルを取りつけて再度エアコンのスイッチを入れた。お手入れランプがきちんと消灯されたのを確認し、僕は(今度こそ)ようやくほっと胸をなでおろすことができた。