元旦は昼まで寝てようと目覚まし時計をセットせずにベッドにもぐりこんだのだがけっきょく朝の5時に目がシャッキリと覚めてしまい、とくにやることもなかったのでそのまま支度して家をでた。せっかくだし初詣に行きたくなったのだ。でもそのまえにスタバが営業してたら朝食でもとろうと立ちよってみると元旦だけ8時オープンのチラシがドアに貼られており(2日から通常どおりの7時オープン)しかたなくもう一つのスタバへ向かってみると、こちらは7時にちゃんと開いていた。すでに4人の客がレジにならんでいたので僕もその後ろにつづく。ちらりと横の豆コーナーに視線をうつすと新作のグアテマラが目に飛びこんできた。おもわずふらふらとレジから離れて手にとりたい衝動にかられたが、さすがにまだ備蓄がたくさんあったので自分で自分の襟をひっぱるように視線をレジにもどす。そばにあるショーケースには新作の抹茶クリームドーナツがならべられていて、それとコーヒーのセットもいいなあと思ったけどその欲求もおさえて当初の目的である新作フラペチーノを注文する。まえにならんでいる人たちのなかにも注文している客がいた。新作の幸先は好調なようだ。抹茶玄米茶もちフラペチーノと言いづらくて(新作の名前はどうしていつも長いのだろう)「抹茶のフラペチーノ」と写真を指さしながら注文した。フラペチーノはパープルハロウィン以来のフタなし提供だった。捨てるときにフタをはずす手間が省けるのがいい。ストローで最初のひとくち目にいきなりもちが入ってきておどろいた。もちは細かくきざまれておりこんなふうに味わえるのかと新鮮だった。僕はてっきり上にどすんと乗っかっているもんだと思ってたが、よく考えてみるとそれだとストローで吸えないよなと自分の短絡的な想像力に閉口した。もちはやわらかくて抹茶との相性も抜群です。まさかスタバでお正月気分を味わえるなんて意外だった。そうか、だからこのタイミングでもちを投入(そしてそれと合わせるために抹茶をチョイス)してきたのか。抹茶の旬は秋だしどうしてクリスマスのあとに抹茶なんだろうと疑問に感じたのだがようやく腑におちた。フラペチーノの甘さはだいぶひかえめで朝に飲むにはこのくらいがちょうどよく感じる。ふと店内をみまわすといつもよりだいぶ若者が多く感じた。おそらくこれから初売にでも行くのだろう。スーツケースを転がす人たちもちらほら見受けられた。帰省してきたのかこれから旅立つのか僕には判断つかなかったが、いずれにせよいつもと異なる風景は僕の胸をたかならせた。僕もはやく仕事を片づけてどこか遠いところへ行きたいなと思った。なんならいまこの席をたち新幹線の切符を買ってピューッと移動することだってできるのだ。そう考えると僕は自由な気持ちになれた。ここではないどこか遠い場所へ思いを馳せながら甘くてほろ苦いフラペチーノをすすっていると、ここがすでに遠い場所のように感じてくる。けっきょくのところ僕はどこへ行っても同じように朝早くからこうしてスタバでまったり過ごすのだ。もしかするとそれはベローチェだったり上島珈琲店だったりエクセルシオールだったりするかもしれないがそんなのは些細な違いでしかない。でもどうしてだろう、僕は物理的にどこか遠くへ行くことを希求している。たとえ頭のなかに「そこへ行く意味はあるのか?」と疑問が浮かんだとしても、心の奥底で行きたい気持ちが淀みのように漂っている。僕はそれをしっかりとすくいとらなくてはならない。店内ではHand Habitsが洗練された音色と歌声で『Just to Hear You(feat. Perfume Genius)』を奏でていた。