10年ぶりくらいに白神山地へ行ってきた。車で深浦側から向かったんだけど、ほぼ砂利道という予想のはるか上をゆく険しさでびっくりした。何度も引き返そうと思ったし、もうJAFを呼ぶ覚悟まで決めながら走っていた。死線をくぐり抜けてなんとか目的地の「アクアグリーンビレッジ ANMON」に到着。アスファルトってこんなに走りやすいんだなと、あらためて「普通の道路」に感謝した。そして「もうこの道は通らないぞ」とかたく心に誓ったのだった。
そういえば前に訪れたときは夏まっさかりで、たしか釣り堀をした記憶が残っている。釣った魚をその場で焼いて食べたんだけど、おいしかったなあ。そんな釣り堀やら遊具施設やら宿泊施設などがあるセンターハウスは、すでに今シーズンが終了しておりました(まだあちこち紅葉しているのに!)。
もちろん人なんか誰もいなくて、かわりお出迎えしてくれたのが「猿」。もうね、あちこちにいるんだよ野生の猿が。しかも生で見るとけっこうデカい。寒くなってきたせいか、どことなく毛がもっさりしていて迫力がある。動物園にいる猿はここまで丸々してなかったような気が……。
そんな野生の王国に迷いこんでしまった僕を、哀れみの目で見つめる猿。僕はなにかいろいろなことを間違ったのかもしれない。
でもせっかくここまで来たんだから、せめて有名なマザーツリーくらいは見てみたい。幸い近くには周辺の地図が載った看板が立っている。そして今はGoogleマップというテクノロジーの恩恵だって享受できるんだ。僕は高ぶる気持ちをおさえながら、マザーツリーへと向かった。
ナビは先ほどの砂利道を示していた。
アクアグリーンビレッジ ANMONからマザーツリーまでは、車で20分くらいだったと思う。ポイントまで到着したら、今度は車を停めて徒歩で向かう。といっても270mなので、それほど長い道のりではない。ただ細い山道なので油断は禁物だが。
そしてようやくマザーツリーが姿をあらわす。ちょうどバックには太陽が昇っていて、なんだか神々しい。あれ、でもなんだか思っていたより低いような……。と思ったら、近くの看板に何か書かれている。それによると、どうやら台風21号の暴風により、地上から9mのところで幹が折れて落下してしまったらしい。こんなところにも台風の被害が出ていたなんて。じゃあこの横にある倒木はマザーツリーの一部だったのか。幹が折れてもこれだけ見応えがあるのだから、完全な状態だったらどれほどのものだったのか。今となってはもうその姿を目にすることは叶わないが、それでもこうして立派にそびえ立つ勇姿を見上げていると、なんだか元気が湧いてくる。それもそうだ。だって推定年齢が400年以上なんだもの。雨にも負けず風にも負けず、熊のひっかき傷(おそらく)にも負けずにそれだけの年月を耐えてきたのだから。鎮まりかえった森の中で、僕はただただ敬服するばかりだった。
マザーツリーをあとにして、再びアクアグリーンビレッジ ANMONへ。そして帰りは弘前方面へ向かう道から戻ることにした。途中で美しい湖(津軽白神湖・美山湖)や紅葉の景色も楽しめて大満足。なによりこっちの道路は広くてきれいに舗装されていて最高だ(笑)。白神山地へ向かわれる方は、ぜひ弘前方面から行かれることをおすすめします。