朝起きて窓をあけ、新鮮な空気を部屋へおくりこむと同時に深く息を吸いこみゆっくりと外へ吐きだすと白い息がうっすらと現れた。ひやりとした、この肌寒い朝の感覚はとてもひさしぶりだった。白い息がでるほど寒くなったんだなあと思うと夏がなごり惜しくなる。気温はおそらく10℃くらいだろうか。そんななか半袖姿でコーヒーを淹れたり軽くストレッチをしたり朝食をつくったりとささやかなモーニングルーティンをこなし、テーブルについて朝食をとる。でもやはり(多少動いたとはいえ)まだ肌寒かったから薄手のパーカーを羽織ることにした。これでちょうどいい体感温度になった。昨日は休日だったので、ふらりと車で山へむかった。山といえどまだ紅葉まで少しはやい気がしたし、ちょっと仕事の疲労がたまっていたので登山ではなく車でのんびり行ける範囲にとどめておいた。それでもそこそこ標高が高かったせいか、車内から確認できる外気温は20℃まで下がっていた(ちなみに山の下では25℃だった)。そんなわけで、登山するなら十中八九20℃を下まわるはずだしライトアウター的なものは必須だろうなと感じた。車である程度の高さまでくると、まわりにはススキの草原が広がっていた。やわらかくて細長い葉を小刻みに揺らしているたくさんのススキのその光景は僕に秋を強く感じさせた。窓を開けるとほんのり秋の香りがただよってくる。連続するカーブの重力と秋のほどよい気候と香りを体感していると、不思議と幸福感につつまれた。あとは樹木が色づくのを待つだけだ。駐車場に車をとめて周囲をかるく散歩することにした。気温はあいかわらず暑くもなく寒くもなく完璧だった。パーフェクトだ。このような気候がずっと続いてくれるとさぞかし生活は楽なんだろうなと思った。でも悲しいかな、そういう理想的な状況ほど長くはもたないものだ。ありがたいことに舗装されている遊歩道があちこちにあり(しかも散歩中だれともすれ違わなかった)散歩コースには困らなかった。むしろ歩き足りないくらいだったけど標高があるせいで太陽が近く、顔がジリジリと焼けている感覚があり(涼しかったから油断して帽子を車に置いてきてしまった)1時間くらいで切りあげた。車にもどるとひどい疲労感が急に全身をおそってきた。このまま運転したら眠りそうだったのでそのまま昼寝をすることに。30分ほど静かに仮眠をとったらだいぶ眠気がすっきりした。まわりを見わたすと、僕以外の車は一台たりともとまっていない。なんだか寂しいなと思いつつも、そのがらんとした景色になぜかまた秋らしさを感じてしまう。その後、ススキがなびく草原を横目に僕はふたたび連続するカーブに身をゆだねながら車で山をくだった。