二子玉川でショッピングと散歩を楽しんだあと三軒茶屋でインドカレーを食べ、それから上野毛というところまで移動する。どうやらここにものすごいパフェがあるらしく、友人がそれをどうしても食べたいらしい。カレーもそうだけど行きたい場所をたくさんもつ人と一緒に行動するのは世界が敷衍されておもしろい。それにしてもよくこんな店を発見できたな。二子玉川、三軒茶屋、上野毛ともにおなじ世田谷区なのでわりと効率よくめぐることができた。いちおう電車を使ったが、がんばれば歩いてもまわれるんじゃないだろうか。カレーが予想以上の行列だったこともありパフェも人気ならならんでいてもおかしくないとふんでいたのだけどこちらはならぶことなくすんなり入ることができた。白を基調としたヨーロッパ風の佇まいで、とびらを開けるとそのまま童話の世界へワープしたような錯覚におちいった。優雅でメルヘンなその空間には5、6人の客が静かにパフェを鑑賞したり突っついたりしていた。木製のカウンター席に腰をおろし、さっそくメニューを拝見する。ぶ厚い洋書のようなメニューもまた世界観へのこだわりを感じさせてくれる。とりあえずはじめてなので定番らしき「苺とピスタチオのフレジェ」に決めた。ついでにコーヒーも注文する。赤ワイン酵母とパッションフルーツの香りを移したらしくコーヒー好きとしては見過ごせない。ほかにも何種類かのコーヒーが用意されていた。NARUTOの螺旋丸を彷彿とさせるマグカップに注がれたコーヒーがやってくる。ツンとした酸味のなかに新鮮な果実のような、魅惑的な味わいを奏でるコーヒーでこれはちょっと衝撃的。いままで味わったことのないコーヒーだ。ちなみに友人もおなじコーヒーを頼んだが器はことなっていた。味だけではなく器も足をはこぶたびに楽しめる要素かもしれない。パフェが登場したときは「これはもはやアートだな」と感動につつまれた。スプーンで崩すのがもったいないくらいだった。じっくりと鑑賞してからスプーン(このスプーンもお洒落だ)でそっとすくい口のなかへと運ぶ。シュワッと溶けて消えてしまうくらいに繊細で、驚きのあまりひっくり返りそうになった。こ、こんなパフェが世界に存在してたなんて……。これはピスタチオのムースかな? 上に盛りつけられたマカロンやらドラゴンフルーツやらオレンジやら色とりどりの果実が美しく、雪のような苺パウダーも優しさに充ちていて感動的。それからムースに埋めこまれた苺も断面が見えるように配置されていてその表現力たるや。僕はおそらく今後の人生において、もうこれ以上のパフェには出会えない気がした。マグカップのような力強い感動の渦につつまれながら幽玄な時が流れてゆく。パフェを完食しコーヒーを飲み干してから僕たちはふたたびあのとびらを開けて外の世界へと踏みだした。目のまえには無感動な、よく知る現実の世界が待ちうけていた。妖精さんのいる世界に浸りすぎるのはいささか危険かもしれない。