散歩中にひらひら飛んできて、ちょうど近くに生えていた紫色の花にピタッと着地したアゲハ蝶。僕が近づいてもまったく逃げるそぶりもなく、ただひたすら蜜をチューチュー吸っていた。そんなにおいしいのだろうか? というかこのような花にも密があるんだな。アゲハ蝶が蜜を吸ってなかったらそんなことは知るよしもなかった。それにしても間近でずっと凝視してても逃げないなんてめずらしい。美しい黄色の羽はとても大きくて、真上から見ると花がすっぽり隠れてしまうほど迫力があった。同じ場所を吸っていると蜜が出なくなるのか、羽をパタパタと小刻みに動かしながら少し横に移動して、ふたたび蜜を一心に吸いはじめる。そんな動作をずっと繰りかえしていた。そしてそのような姿を僕もまた飽きることなく眺めていた。ときおりスマホの「カシャア」という、わりとうるさめのシャッター音が秋の太陽がふりそそぐ野原に響きわたるのだが、それでもアゲハ蝶はおかまいなしに無我夢中で蜜をせっせと体内に運んでいた。アゲハ蝶って音とか聞こえないのかな?