ドールマン「たまにはこうして配達のことなんか忘れて無目的にバイクを走らせるのもいいもんだな」
サム「ああ、今日はうまく寝つけそうにない」
ドールマン「武装サバイバーとの戦闘で、まだ気持ちの昂りがおさまらないのか？」
（無言でバイクを走らせるサム）
ドールマン「眠れないなら私を抱きながらベッドにもぐりこんでいいんだぞ、遠慮なんかするな」
サム「……」
ドールマン「見ろよサム。今夜は満点の星空だ。月もあんなきれいに輝いてる」
サム「ふっ」
ドールマン「7月の満月はアメリカの農事暦で『バックムーン』と呼ばれてるらしい。なんでも、7月は雄ジカ（英語でbuck）のツノが生え変わる時期であることからこの名前がつけられたそうだ。もちろん7月だけじゃなく、ほかの月にもいろんな名前がつけられてる。アメリカの先住民は季節を把握するためにこうして各月の満月に名前をつけてるんだ」
サム「ここはオーストラリアだ」
ドールマン「まあ細かいことは気にするな。空は世界共通って言うじゃないか」
（夜空を見上げるサム）
ドールマン「なにか言いたげだな。どうせ真っ暗なんだしストレス発散の意味もこめてあの山にむかって叫んでみたらどうだ？」
（少し考えこむサム）
サム「おーい、誰かいるか？」
ドールマン「俺がいるぞ」
サム「わかったよ！」
ドールマン「まずい、岩があるぞ！」
サム「おいコラ危ないからあまり騒ぐな」
（ウィリーで岩をよけるサム）
ドールマン「あそこに見えるのはジャンプ台じゃないか？ サム、このまま一気に対岸へ渡れそうだぞ」
サム「しっかりつかまってろ」
（先程までむずかしい表情をしていたサムに、ようやく笑顔がこぼれはじめる）
ドールマン「イヤッッホォォォオオォオウ！」
サム＆ドールマン「・・・」
