朝目覚めたら6時を過ぎていた。休日なので慌てることはないのだが、今から準備してとなると朝一のスタバ(7時オープン)には間にあわなそうだ。であればここはやっぱりタリーズかな。フォンテのタリーズは8時から開くので、のんびり準備しながらむかえば間にあうだろう。僕はいつもどおりスウェットを頭からかっぽりとかぶり、ベストに腕をとおしてからコートを羽織った。外はまだうす暗くライトを付けながら走っている車もちらほら見かけた。
なかいちの駐車場に車をとめ、歩いてタリーズへと向かう。凍てつく寒さが骨にしみる。とはいえ駐車場からは歩いて10分もかからない。タリーズに到着したのはちょうど8時をまわったころだった。
店内に入るとまだ音楽も流れておらず、しんとしていた。もちろん客は誰もいない。僕は本日のコーヒーのショートサイズを注文した。休日は朝食を抜くことが多いのだ。
コーヒーを受けとり窓際のソファ席へと向かい、コップをことんとテーブルに置いた。そしてコートを脱いで席につくと店内に音楽が流れはじめた。無音の店内もちょっぴり新鮮だったけど、やっぱり音楽がかかると一気にカフェっぽくなるなあ。
窓の外にはエスカレーターと階段がならんでおり、駅から来る人と駅に向かう人が上り下りしていた。多くの人が厚手のコートにマフラーをがっしりと巻いていた。そんな光景を眺めていると、ふいにリップクリームを家に忘れてきたことに気がつく。またやってしまった。たしか先月も忘れてきてしまい、駅のコンビニで買ったんだったな。僕は小さなため息をつきながら、スマホを取りだして本の続きを読むことにした。
40分ばかりが経ち、ふと窓の外に目をやるとモコモコした雲が空の中をゆっくりと、しかし着実に進んでいた。そして青空もまた着実に雲のあとを追っていた。
さて、僕もそろそろ行こうかな。
僕はコップを棚に返してから、店のドアをひらいた。広々とした店内には団らんを楽しむ一組の家族だけが残っていた。