アジサイを撮りに千秋公園へ行ってみたらちょうど蓮が見頃を迎えていた。お堀にびっしりと敷かれた葉に、すっと伸びる繊細なピンク色をした花びら。思わず出くわしたこの状況に胸が高鳴らないわけがない。お堀に沿って歩きながら無心でシャッターを押す。背景には国学館もそびえている。広角で全体像を収めたり望遠で蓮をピンポイントで狙ったりと撮影しがいのあるシチュエーションだ。
また蓮だけではなく、ところどころに睡蓮も咲いていた。こちらは蓮よりも小さくてずっと水面に近い場所に位置している。でもピンクの色合いが濃く、蓮に負けじと主張しているところがかわいらしい。「蓮と睡蓮ってなんだかいい感じに共存するもんだな」と思った。
それにしても蓮の葉って大きいな。自分の顔より広い葉をしげしげと見つめていると、よくもまあこんなに成長したものだと感心してしまう。葉の中心には前日に降った雨のせいか、水たまりができている。風で葉が揺さぶられるたびに、グラスのワインがくるりと回転するように水たまりがまわる。おもしろい。たまに勢いあまって場外に飛んで行っちゃたり。そんな自然の戯れに、ずいぶんと癒されてしまいました。
お堀をぐるりとまわってから公園内に入ってみる。さっそくアジサイが咲いていた。時期が遅かったので枯れかけているものが多かったが、まだ満開に近い個体もちらほら見受けられた。そして蝉の抜け殻をくっつけたアジサイもたくさん目にした。「この花のように自分もひと花咲かせるぞ」と喜び勇んで羽ばたいていく姿が目に浮かぶ。蝉の人生は今、最盛期を迎えているのだ。
湖月池にも蓮が咲いていた。大賀ハスというらしい。数は少なかったけど見事なサイズといえる。お堀の蓮は大賀ハスではないのかな? 違いがよくわからない……。そういえば湖月池にも睡蓮が咲いていた。こちらは純白の睡蓮でライトが葉の間に浮かんでいるようにも見える。小雨まじりの空だけど、そんなしっとりとした空気につつまれる睡蓮はとても幻想的だった。すっかり主役がアジサイから蓮と睡蓮になってしまったが、まあそんな日もあるだろう。限られた季節でしか咲かない花とめぐり合えた幸運に、ぼくは心から感謝した。